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2005/12/23

12/21フルネラストコンサート

フランスの長老指揮者、ジャン・フルネが都響との演奏会を最後に現役を引退すると言うので聞いてきた。

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会場で配布されたプログラムによれば御歳92。二本足で歩くのだって大変なはずなのにまだ仕事をしていらっしゃる。普通に考えれば凄い話だと思う。

演奏会詳細は以下の通り。

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」op.9
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

伊藤 恵ピアノ独奏
ジャン・フルネ指揮 /東京都交響楽団
2005年12月21日(火) 東京文化会館大ホール 19時開演

ベルリオーズはかなりのスローテンポ。今まで経験してきた演奏のどれよりも遅かった。早めのテンポで曲の楽しさを前面に出た演奏とは違って、曲を隅々まで聞かせるような演奏。

モーツァルトのコンチェルトは2年前にやはりフルネ/チェコフィルと共演した伊藤恵。すっかりテンポの落ちた朝比奈爺ともピタリと合わせることが出来た稀有なピアニスト。今回もかなりのスローなテンポにしっかり寄り添い、しかもそのテンポの中でもしっかりと自分の主張を入れているように聞かせてくれた。ピアノとオケの掛け合いも優しさに包まれてて美しかった。2楽章はピアノのソロで始まり、テンポが普通っぽくなったような気がしたが、オケが入ってきてすぐ遅めに引き戻されたように感じたとき、良い意味で共演ではなく競演でもあることを痛感。

サプライズはブラームスの交響曲第2番。全てにおいて力みがないブラームス。2楽章を除いてひたすらスローテンポ。ffでの爆発感やテンポが速い場面でのイケイケ感などが全くない。しかし、とにかくひたすらに綺麗で美しい。4楽章に入っても同じで、終始一貫優しさと美しさで通し切った。4楽章の終わりで、力みはないけれどもこれまでにない大きな音がホールを包み込みこんだ時、何かに対する感謝の気持ちのようなものが伝わってきた。

こんなブラームスは未だかつて聞いたことがないし、今後も聞けないと思う。

演奏会全体としてはスローテンポにありがちな刻み感は全くなかった。フルネはブラームスの4楽章の始めですぐffとなる場面でも大きなザッツを出さないが、オケはバラけずに十分に立派な音量を出してくる。見た目コンマスは情感たっぷりに弾き込んで行く感じだったが、オケから出てくる音は全く大げさにならず、とても抑制の聞いた綺麗な音を出し続けてくれた。弦楽器も最終プルトまで本当に頑張っていたように見えたし、最後まで老巨匠に応えていたように思えた。良い演奏をありがとうとオケにも言いたい。

終演後、フルネははオケの代表から花と記念品が贈られ、オケが引っ込んだ後もずっと続く暖かい拍手に包まれていた。そのとき、老指揮者が最後にこの日本を選んだ理由がわかったような気がした。

その場面に立ち会えた事を心から喜びたい。

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コメント

私も文化会館で聞いてきました.いくつかのブログや掲示板での書き込みを見ましたが,ここの感想が一番自分の感想に近かったです.
あの神々しいブラームスを聞いた後,しばらくは第2を他の演奏で聞く気がしませんでした.あの日あの時の会場の響きを忘れたくありませんでした.素晴らしい体験でした.
伊藤さんとのモーツァルトもめったに聞けない美しい響きの連続で,ずっとどきどきして聴きました.
あの会場で聞けてよかったです.

投稿: MFB | 2006/01/02 17:38

MFB様
コメントありがとうございます。
素晴らしいブラ2でしたね。
恐らく他の指揮者ではできないでしょうし、あのように演奏したい指揮者もいないように思います。そう言う意味でも2度と聞けない貴重な体験だったと思っています。

投稿: つっちぃ | 2006/01/03 22:30

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